栄養コラム 2025.11.18
【もう太らない!?】意外な糖質の秘密と正しい摂り方
「糖質」という言葉は、ダイエットや健康を語るうえで常に上位に挙がるキーワードで、糖質の摂取量や摂り方については様々な意見があります。今回はそんな糖質の摂りすぎや不足によるデメリット、目的に合わせた糖質の摂り方についてまとめていきます。
≪目次≫
糖質とは
糖質とは、炭水化物のうち“エネルギー源にならない”食物繊維を除いた、ヒトの消化酵素で消化することができ、身体の主要なエネルギー源になる栄養素のことを指します。糖質と似たワードでよく聞く“炭水化物”とは、糖質と食物繊維を合わせたものということです。
糖質はたんぱく質、脂質とともにエネルギー源となる栄養素であり、1gあたり4kcalのエネルギーを産生します。
食品では、主食になるお米やパン、麺類に特に多く含まれ、そのほかにもイモ類や小麦製品、根菜類、果物、甘いものに多く含まれます。
糖質の働き
糖質は身体の主要なエネルギー源として重要な役割を持っており、特に三大栄養素の中でも最もエネルギーに変わるのが早いため、運動前や緊急時のエネルギー補給に最も適した栄養素です。また、脳や赤血球のように糖質のみをエネルギー源としている組織もあり、身体にとって欠かせない栄養素として知られています。
身体は常に必要なだけの糖質を供給するために、血液中の糖の濃度である“血糖値”を維持し、必要に応じて全身の各細胞にエネルギー源として供給しています。
糖質を摂りすぎると
①中性脂肪が蓄積する ②糖化が起こる ③糖尿病になる などの問題が起こります。
中性脂肪が蓄積する
食事から糖質を摂取すると、血糖値が上昇します。糖質は糖(ブドウ糖)のまま身体に多量に残っていると身体の組織を傷つける毒になってしまうため、血糖値を下げるためインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンには血液中の糖を肝臓や筋肉にグリコーゲンとして蓄えたり、それでも貯蔵しきれない分は脂肪に変換して脂肪細胞に蓄えたりする働きがあります。
グリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えられる量には上限があるため、それ以上に摂取した分は全て脂肪に変換されて蓄積されてしまいます。特に筋肉に蓄えられるグリコーゲンの量は筋肉量に比例するため、筋肉量の少ない人では筋肉量の多い人に比べ脂肪がつきやすくなります。
また、糖質の摂取量自体はさほど多くなくても、糖質に偏った食事などで血糖値が急上昇すると、血糖値を下げるためのインスリンが過剰に分泌されることで脂肪がつきやすくなります。
糖化が起こる
糖化とは、糖質の過剰摂取などにより血液中に余った糖が体内でたんぱく質と結びつき、たんぱく質を硬化・褐変させてしまう反応のことを指します。身体の焦げ付きとも言われ、たんぱく質は糖化されることによって劣化してAGEs(終末糖化産物)となり体内に蓄積していきます。
AGEsは老化たんぱく質とも呼ばれ、全身の老化に関わるなど様々な影響を及ぼします。わかりやすいところで言えば、肌のたんぱく質を劣化させることでしわやたるみなどの老化現象を起こしたり、体内でも血管や赤血球のたんぱく質を劣化させることで代謝を低下させたりしてしまいます。これは美肌にとってもダイエットにとっても、健康にとっても悪影響と言えます。
AGEsは元のたんぱく質に戻ることはできず排泄もされにくいため、こうした身体への悪影響を避けるためには糖化を起こさせないことが重要です。
糖尿病になる
糖質の摂取により血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンが分泌され各組織に分配されることで血糖値が一定に保たれます。しかし、糖質の過剰摂取により血糖値が急上昇するとインスリンが必要以上に分泌されます。
こうした現象が頻繁に起こるようになると、徐々にインスリンの効きが悪くなったり、インスリンを分泌する膵臓が疲弊してしまい、十分なインスリンを分泌することができなくなってしまいます。やがてインスリンを分泌できなくなった身体は血糖値を下げることができず、摂取した糖が全身を蝕んでいく状態になります。これが糖尿病(2型糖尿病)が起こる仕組みです。
糖尿病は食事や運動・服薬などで改善を目指しますが、完治することはなく、重症化すると全身の毛細血管をボロボロにしてしまうため、網膜症による失明や腎症による人工透析、神経障害による足の壊疽や切断などを余儀なくされてしまいます。また、食事も血糖コントロールが必須となるため甘いもの等を自由に楽しむことができなくなってしまいます。
糖質が不足すると
糖質が極端に不足すると、①代謝や脂肪燃焼の低下②筋肉量の減少③低血糖によるイライラや疲労感が起こります。
代謝や脂肪燃焼の低下
糖質はエネルギー源として重要な役割を持つ栄養素ですが、ダイエットや減量においては脂肪を蓄積させる原因にもなるため控えることが望ましいものとして知られています。しかし、糖質は実は不足しすぎても代謝を低下させ効率よく脂肪燃焼することができなくなってしまいます。
脂肪燃焼をする際、脂肪は最終的にTCA回路(クエン酸回路)という経路をたどってエネルギー源に変換されます。このTCA回路には「オキサロ酢酸」という物質が不可欠で、オキサロ酢酸は糖質(ブドウ糖)を分解することで供給されます。オキサロ酢酸がないとTCA回路は進行しないため、脂肪の燃焼には糖質が絶対に必要ということが分かります。
また、糖質制限により過度なエネルギー不足に陥ると、基礎代謝が低下することによって脂肪燃焼がしにくくなったり、リバウンドしやすくなったりすることもあります。
筋肉量の減少
糖質は食事からとり続けなくても体内にストックされているため、ある程度の時間は問題なく過ごすことができます。しかし、貯蔵しているグリコーゲンが枯渇すると、他の物質から糖質を作り出す、糖新生という機構が働き始めます。
空腹時など、血糖になることができる肝臓に蓄えられた糖質は、24時間弱程度で枯渇すると言われており、それ以降は脳や赤血球などの糖質のみをエネルギー源とする組織に糖を供給するため、主にアミノ酸を糖質に変換します。このアミノ酸は、筋肉のたんぱく質を分解することで供給されるため、糖質が不足すると筋肉量が減少していきます。
筋肉量が減少すると基礎代謝が低下したり、特に高齢者ではフレイル(虚弱)やサルコペニア(筋力低下)などにより最悪寝たきりになってしまったりすることがあります。近年は若い世代で起こるフレイルで心身の機能が低下している人が増加していることも指摘されており、過度な食事制限が問題にもなっています。
筋肉量が少ない!という方や筋肉をつけて引き締めたい!という方は筋トレと合わせて適度な糖質の摂取が重要になります。
低血糖によるイライラや疲労感
糖質の不足により血糖値が低下すると、糖のみをエネルギー源とする脳にエネルギーが行き渡らなくなり、イライラしやすくなります。また、エネルギー不足により疲労感を感じやすくなります。
基本的には糖質が不足しても糖新生によって糖が補給されるため、糖質の摂取不足によって倒れてしまうほどの低血糖になることは滅多にありませんが、極度の糖質不足の場合は命にかかわる場合もあります。
糖質の種類
糖質は単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類の4種類に分類され、それぞれ異なる特徴を持ちます。
単糖類
単糖類はこれ以上分解されない、糖質の中で最も単純な糖のことを言います。体内では消化の過程を必要としないため、小腸から血管への吸収が速く、緊急時(脱水症状など)や運動時に即時のエネルギーになるという特徴があります。
しかし日常生活においては吸収が早い=血糖値が急上昇するため、インスリンが過剰に分泌されやすく、ダイエットにおいては脂肪になりやすく太りやすい、健康においても糖尿病を引き起こす原因になりやすいというデメリットがあります。
単糖にはグルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースなどがあり、これらを人工的に加工した、果糖ブドウ糖液糖やぶどう糖果糖液糖なども吸収が早いため、これらを含むジュース類やゼリーなどは脂肪になりやすく健康にも良くないとされています。
二糖類
二糖類は単糖が2個結合したものを言います。単糖と同様に吸収が速いため、ダイエットや健康においては血糖値が上がりやすい、脂肪になりやすく太りやすいという問題があります。
代表的な二糖類は砂糖を構成するスクロース(ショ糖)やマルトース(麦芽糖)、ラクトース(乳糖)などで、特に甘いもの、菓子類やジュース類に多く含まれます。このため同じ糖質であっても、ごはんやパンより菓子類やデザート類は太りやすく健康にとっても良くないということが分かります。
オリゴ糖類
オリゴ糖類は単糖が3~10個結合したものを言い、人間の消化酵素では分解されないため、エネルギー源になりにくいという特徴があります。とはいえ全くエネルギーにならないわけではなく、腸内細菌によって0~2kcal/gのエネルギーを産生していると言われています。
また、オリゴ糖は善玉菌のエサとなり、ミネラルの吸収もサポートするという働きがあります。オリゴ糖は健康に良いというイメージがある方が多いのはこのためです。しかし、摂りすぎるとお腹を下しやすいという特徴もあるため適度な摂取がおすすめです。
ごぼうや玉ねぎ、たけのこ(フラクトオリゴ糖)、牛乳などの乳製品(ガラクトオリゴ糖)、大豆、豆乳などの大豆製品(大豆オリゴ糖)に多く含まれます。
多糖類
多糖類は単糖が多数結合したものを言います。糖質の中では最も吸収が緩やかで、単糖類や二糖類と比べると血糖値の上昇が緩やかなため、脂肪になりにくいという特徴があります。
米や小麦、イモ類などに含まれるでんぷん(アミロース、アミロペクチン)が代表的で、グリコーゲン、ヒアルロン酸、セルロースなどもあります。セルロースは植物の細胞壁の成分であり、人間の消化酵素では消化できないため、人間の栄養素としては食物繊維に分類されます。
糖類ゼロって?
糖質に関連する食品の表示では「糖類ゼロ」と「糖質ゼロ」という文言をよく見かけます。糖類と糖質、どちらも似た名称ですが、これらは炭水化物の分類の仕方によって異なる定義がされています。
まず炭水化物を生理学的に分類すると、糖質と食物繊維に分類されます。炭水化物のうち、人間の消化酵素で消化することができ、エネルギーになるものが「糖質」と呼ばれます。
一方で炭水化物を糖の種類で分類すると、糖類、オリゴ糖類、多糖類に分類されます。炭水化物のうち構造が単純な単糖類と二糖類を合わせて「糖類」と呼んでいます。
つまり、「糖類ゼロ」というのは単糖類と二糖類をほとんど含んでいないが、オリゴ糖や多糖類は含んでいる可能性があるということ、そして「糖質ゼロ」というのは炭水化物のうちエネルギーになるものすべてをほとんど含んでいないということが分かります。
ちなみに“ほとんど”含んでいない、と言ったのは、食品表示法の規定により、100g又は100ml中に糖質、または糖類が0.5g以下の場合は「ゼロ」や「ノン」「レス」と言った表示をできるという決まりがあるためです。このため500mlのドリンクであれば、「糖類ゼロ」「糖質ゼロ」などと書いてあっても、2.5g程度は糖類や糖質を含んでいる可能性があります。
糖質摂取の目安量
糖質の健康のための目標量は?
三大栄養素の一つである糖質は、健康を維持するための摂取量として脂質、たんぱく質と合わせてエネルギー(kcal)に対する割合で目標量が設定されています。糖質の目標量はエネルギー摂取量の50~65%です。
糖質は1gで4kcalあるので、例えば1日の摂取カロリーを1500kcalとする場合、
1500×(0.5~0.65)÷4=187.5~243.75
となり、190~240gくらいが適正な糖質量ということになります。ぜひご自身の摂取カロリーの目標でも計算してみてください。
ダイエットの場合も健康を維持するための範囲から大きく外れるのはよくないですが、糖質はダイエットにおいては比較的控えた方が良い栄養素ですので、50%~55%Eくらいで調節するのがおすすめです。
糖質のダイエットのための目安量
糖質の目安量は、一般社団法人 食・楽・健康協会によって1食あたり20~40g、間食で10gまでに控えることが推奨されています。1食20~40g×3食+10gなので、1日の目安量は70~130gです。
これ以上に減らすことは筋肉の分解→代謝の低下を招くと考えられるため、あまりお勧めできません。また、糖質を過剰に制限してエネルギーを摂る際、脂質やタンパク質の割合が極端に増えることで、排泄や疲労感などにも影響する可能性があります。
こうした側面を考慮すると、糖質量として130g/日程度が程よいバランスと言えそうです。
コンビニのおにぎり1個分程度(普通茶碗1杯よりやや少ないくらい)の糖質量は40g程度ですので、1食あたりはコンビニおにぎり1個分を目安にするとよいでしょう。
ちなみにラーメン、パスタ、うどんなどの麺類や、丼もの、カレーライスなどでは、1人前で糖質量が70~110g程度、つまりコンビニおにぎりの倍くらいの糖質を摂取することになります。今まで当たり前に摂っていた方からすると衝撃だと思います。
もちろん、健康的な食事としては、糖質量自体には問題ありません。しかし、ダイエットの食事にしては圧倒的に摂りすぎということです。
その他、食パンでは8枚切り2枚程度がその目安量に、ジャムなどかけるものに糖質が多く含まれる場合は調整が必要です。また、パンは糖質が少なくても脂質が多いことも多いため全体的なバランスを見て食べすぎには注意したいです。
あくまで、食事の調整をメインにしてサイズダウンや減量を目的とする方向けですので、ガッツリ筋トレをして筋肉をつけたい!という方はもう少し糖質が必要です。また人それぞれ代謝するのが苦手な栄養素も異なりますので、最終的には体重や体脂肪率の変化、体調を見て他の栄養素とのバランスで調整する必要があります。
また、糖質は量だけでなくその質や食べ方もかなり重要になるため、糖質の種類や血糖値を急上昇させない食べ方にも気を付けるのがおすすめです。
※ダイエット食の基本はこちら: 【痩せて綺麗になりたい人必見!】ダイエット食の基本!
太りにくい糖質の摂り方
太りにくい糖質の摂り方で重要なのは、とにかく血糖値を急上昇させないことです。
血糖値を急上昇させないコツは、
- 野菜やたんぱく質、脂質を先に摂る
- ゆっくりとよく噛んで食べる
- 単糖や二糖類の多い甘いものを控える
- 低GIの食品を選ぶ
- 丼や麺などの一品料理を控える
- 長時間の空腹をつくらない
です。
こうした食べ方は、単純に脂肪の蓄積を抑えるだけでなく、糖化を防止することにもつながるため、糖化による筋肉の劣化や肌の老化を防止することも期待できます。
丼や麺など一品料理の場合でも、先に上の具材を半分程度食べてからご飯を食べ始めるのがおすすめです。また、低GIの食品は血糖値の上昇は比較的緩やかですが、当然食べすぎてしまっては太る原因になりますので注意しましょう。
また、脂肪を落とすというよりも筋肉をつけたいという気持ちが強い方は、たんぱく質だけでなく糖質も健康量程度しっかりと摂って、ガッツリ筋トレをすることがおすすめです。
甘味料
甘味料は食品に甘みを付加するために使用されるものの総称で、糖質由来の「糖質系甘味料」と糖質以外に由来する「非糖質系甘味料」に分類されます。
ここまでにお話した単糖類や二糖類、その代表格であるブドウ糖や砂糖はもちろん、オリゴ糖やでんぷんなども甘味料の一種であり、糖質系甘味料に分類されます。またその仲間として、糖質とアルコールが結合した糖アルコールと呼ばれるものも糖質系甘味料に分類されます。代表的なものにはキシリトールがあり、歯を丈夫で健康に保つなどむし歯になりにくい甘味料として知られています。
一方の非糖質系甘味料には人工甘味料と天然甘味料があり、人工甘味料には過剰に摂取すると発がん性など健康に悪影響がある可能性が指摘されているものもあります。
非糖質系甘味料は基本的に、砂糖よりも甘味度が高く、少量で甘みを感じることや、血糖値を上げないこと、またむし歯になりにくいという特徴を持つものもあるため、市販の菓子類や加工食品にはよく使用されています。糖質の摂取量をコントロールするためにはこうしたものをうまく活用するのも一つの手です。
しかし、特に人工甘味料は甘味度が高いゆえ、その甘みに慣れてしまうと本来の甘みでは満足できなくなってしまうなど、中毒性のあるものもあるため、頼りすぎには注意が必要です。
まとめ
糖質やその仲間には様々な働きがあり、一概に糖質と言ってもその種類や目的によって積極的に摂りたいもの、控えたほうが良いものは変わってきます。今の糖質の摂り方、選び方は自分の目的に合っているのか、振り返ってみてください。
